コロナで変わる賃貸物件の希望条件|テレワークの広がりで入居者意識に変化?
2020.06.27

コロナで変わる賃貸物件の希望条件|テレワークの広がりで入居者意識に変化?

コロナの影響により、私たちの生活に起こった変化と言えば「テレワークの普及」です。

自宅で仕事をするテレワークは、「設備」「間取り」といった賃貸物件のニーズに変化をもたらす可能性があります。

未だ終息したとは言い難いコロナウィルス。第二波に備えて、今から「何かできることはないか?」と考える賃貸オーナーさんも多いのではないでしょうか。

そこで今回はアンケート調査の結果を見ながら、テレワークの普及で変化しそうな賃貸ニーズについて解説します。

意外な調査結果もご紹介しますので、ぜひ賃貸経営のお役に立ててください。

 

賃貸物件に欲しい設備ランキング!テレワークに必須の条件とは?

物件の室内写真

賃貸物件を選ぶ際の条件と言えば「バストイレ別」や「エアコン」はもちろん、「無料インターネット」や「宅配ボックス」も今や人気の高い設備です。特に2020年3月以降のテレワークの広がりにより、インターネット環境は賃貸物件に欠かせない設備になったと言えるでしょう。

賃貸情報サイト「ウチコミ!」は、テレワークの進んだ2020年3月半ば以降に「家賃が高くても入居したい設備」というアンケート調査を実施。案の定「インターネット無料」「宅配ボックス」は、入居者にもっとも人気のある設備という結果になりました。

【周辺相場より家賃が高くても入居したい/入居が決まると思う設備ランキング】

  ファミリー 単身者
1位 インターネット無料 インターネット無料
2位 バス・トイレ別 バス・トイレ別
3位 宅配ボックス 宅配ボックス
4位 24時間利用可能ゴミ置き場 24時間利用可能ゴミ置き場
5位 家具・家電付き 家具・家電付き
6位 エアコン ウォークインクローゼット
7位 追い炊き機能 追い炊き機能
8位 TVモニター付きインターホン 浴室換気乾燥機
9位 床暖房 エアコン
10位 太陽光発電システム 独立洗面化粧台

参考:ウチコミ調べ

全国賃貸住宅新聞が年1回公表している「入居者に人気の設備ランキング」においても、「インターネット無料」「宅配ボックス」は毎年上位を独占。

テレワークが重視されるようになり、差別化のアイテムだった設備は今や必須条件になったと言っても過言ではありません。

ただ実は、今後の入居者ニーズは設備以外にも大きな変化が表れるかもしれないのです。

 

コロナで変わった?間取りの希望条件

間取り図

株式会社リクルート住まいカンパニーは、2020年4月17日~4月20日の3日間において「コロナ禍を受けたテレワークの実態調査」を実施。テレワークを行う多くの人が「仕事専用の空間が欲しい」「リビングの一角を間仕切りしたい」など、間取り変更を希望していることが分かりました。

これまで会社で仕事をしていた人にとって、自宅で仕事を行うテレワークは「集中できない」「オンオフの切り替えができない」といった不満が募りがちなためです。

コロナショック以降の間取り変更意向の調査

テレワークに関する不満の調査

画像引用:株式会社リクルート住まいカンパニー 「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査

それもそのはず。

リクルート住まいカンパニーは、同調査において「テレワークの実施場所」という質問も実施。結果、仕事専用のスペースとなる部屋を確保できている人は半数以下。

反面、テレワークを行う場所を「リビングダイニング」と答えた人は55%となり、昨年11月の調査より大きく増加しました。

テレワークの実施場所に関する調査

画像引用:株式会社リクルート住まいカンパニー 「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査

テレワークは「子供を見ながら仕事をできる」「家族と過ごす時間が増える」というメリットがある一方、いざ仕事となると集中できるスペースや環境が限られるデメリットもあります。

今後の賃貸経営において、「間取り」が大事な差別化要素になる可能性は無視できません。

 

テレワークの増加で地方回帰が進む可能性

テレワークで働くマスクをした女性

そんな中、ひそかに注目され始めているのが「郊外物件」のニーズです。

特に首都圏では「自宅で仕事ができるなら、家が職場の近くである必要がない」と考える人が増え、部屋数が多く取れる郊外の物件にニーズが移るかもしれないと見られているのです。

事実、株式会社リクルート住まいカンパニーの「テレワークが継続する場合に住み替える家の希望条件」の調査において、「部屋数」「個室の確保」「リビングの広さ」などが上位になっています。

今後住み替えたい家の希望条件

画像引用:株式会社リクルート住まいカンパニー 「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査

部屋数を確保するには、「家賃」や「物件価格」という問題をクリアしなければいけません。そのため、東京都などの都市部から少し離れた郊外物件にニーズが移るのではないかと考えられているのです。

そこで東京都と比較し、ベッドタウンとなる埼玉県や千葉県の物件がどう違うのか見てみましょう。

下表は公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している、2020年1~3月における取引された賃貸物件のデータです。

地域 取引件数 賃料 建物面積 ㎡単価
東京23区 21,448 10.0万円 32.01㎡ 3,130円
東京都他 3,631 7.2万円 34.24㎡ 2,108円
埼玉県 3,611 6.7万円 38.05㎡ 1,766円
千葉県 2,973 7.2万円 39.35㎡ 1,839円
横浜・川崎 5,460 8.1万円 34.22㎡ 2,358円
神奈川県他 1,540 6.6万円 37.68㎡ 1,741円

参考:レインズデータライブラリー

埼玉県、千葉県を比較した場合、東京都23区の家賃(㎡単価)は1.7倍以上も高くなっています。しかし建物の面積は、東京都23区が1割以上狭いというのが現状です。

では分譲マンションではどうでしょうか。

比較するのは取引件数が最も多く、不動産市況の参考としやすい中古マンションの取引動向です。

東京都の物件は取引価格や㎡単価が埼玉県や千葉県の倍であるにも関わらず、広さは埼玉県や千葉県に比べて1~2割ほど狭いのが分かります。

取引価格平均 専有面積 ㎡単価
東京都 4,164万円 59.01㎡ 70.57万円
埼玉県 2,098万円 66.97㎡ 31.32万円
千葉県 1,829万円 72.06㎡ 25.38万円

参考:レインズデータライブラリー

つまりテレワークが今以上に普及すれば都市部にこだわる必要はなく、価格が安くて間取りの広い郊外に住まいを移そうと考える人が増えても不思議ではないのです。

特に昨今は「田舎移住」や「コロナ疎開」といったキーワードも耳にするようになり、ひいては地方活性化につながる可能性も否めません。

 

第二波に備えて今すぐ賃貸物件をリノベーションすべき?

リノベーション中の部屋にいる2人の女性

ここまでコロナショックによって変化しそうな入居者ニーズ、「設備」や「間取り」について考えてみました。

今後、賃貸経営において把握しておくべき入居者ニーズの変化をまとめておきましょう。

●「無料インターネット」「宅配ボックス」は賃貸物件で必須の設備になる

●個室を確保できる部屋数や間取りが重視されるようになる可能性

●テレワークの普及により郊外物件の人気が高まる可能性

今回解説した設備や間取りを変更するには、大掛かりなリフォームやリノベーションが必要です。

賃貸オーナーの費用負担は決して軽くはなく、三密になりづらいエリアにおいては今回解説した対策が不要というケースもあり得ます。

気軽に何度でも行えることではないため、今回解説した設備や間取り変更を今すぐ行うべきとは限りません。

ただ「入居者ニーズ」は、賃貸経営を成功に導くにあたり非常に重要な要素です。

近隣の競合物件や人口動態などのマーケットを注視し、いざ行動に移す際の資金を蓄えておくことが今からでも行えるコロナウィルス第二波への備えと言えるのではないでしょうか。