同じ形でも名前が違う?ちょっと気になる間取りの疑問
2020.10.27

同じ形でも名前が違う?ちょっと気になる間取りの疑問

あなたは不動産の間取り図を見て、「同じ形の間取り図なのに、名前の違う部屋がある」なんて思ったことが無いでしょうか。

たとえば「納戸と居室の違い」。

同じマンションの同じ間取り図なのに、一部だけ名前が違う部屋があったりします。

実は間取り図における表記の違いは、明確なルールや法的根拠に沿っているケースが少なくありません。

不動産屋さんが好き勝手に記載しているわけではないのです。

今回は、そんな間取り図におけるちょっと気になる疑問について解説。

法的な根拠がある違い、逆に不動産屋さんが好きに決めて良い違いもご紹介します。

よくある質問から意外と知られていないルールまでまとめて解説しますので、ぜひご参考になさってください。

 

「納戸」と「洋室」の違い

間取り図でたまに見かける「納戸」。

「納戸と洋室はどう違うんだろう」と疑問に思ったことがあるかたも多いはず。

納戸とは、「建築基準法上で居室と認められない部屋」を指し、建築基準法では居室の定義を以下であると定めています。

 

第二条4 居室 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

引用:e-Gov 建築基準法

 

具体的な間取り図を例に、もう少し詳しく見てみましょう。

納戸と部屋

 

上図AとBにおける違いはただ一点、「窓の有無」です。

建築基準法における居室の定義はほかにも細かく規定されており、以下の基準や制限をクリアするかどうかで決まります。

 

【居室の基準や制限】

●採光に関する基準

●換気に関する基準

●天井の高さに関する基準

●床下に関する基準

 

たとえば一般住宅なら、主に「窓の面積は床面積の1/7以上」と定められています。よって上図Aは窓がないため居室にならず、上図Bは窓があるため居室として表記できるのです。

同じマンション内で間取りも面積もまったく変わらないのに、納戸と洋室で表記が異なるケースがあります。

その理由は、建築基準法上の居室にあたるかどうかの違いなのです。

 

「居室」と「寝室」の違い

納戸と居室の違いを理解すると、今度は「居室と寝室」あるいは「居室と洋室」といった違いにも疑問が湧くのではないでしょうか。

結論から言えば「居室」、「洋室」、「寝室」に大した違いはありません。

居室と寝室

 

上図Bでは違いを分かりやすくするため洋室と寝室を区別していますが、基本的に不動産会社の用意する間取りは、洋室なら洋室、寝室なら寝室で統一されます。

両方とも寝室と表記することも可能ですし、両方とも洋室としても問題ありません。

建築基準法の定義では「洋室」「寝室」「書斎」などはすべて居室であるため、各部屋の配置やデザイン性などから建築会社や不動産会社がどのように表記するか決めているにすぎないのです。

つまり法令上の決まりは特にないため、洋室と寝室のどちらで表記するかは自由。

当然、寝室と表記された部屋を書斎や子ども部屋として使用するかどうかもあなた次第なのです。

 

「ベランダ」と「バルコニー」の違い

続いては、誰しも一度は気になったことがあるはずの「ベランダとバルコニーの違い」です。

実は、ベランダとバルコニーには法令上の違いはありません。あくまで慣例的な解釈や建物からのイメージにより、間取りを作成する建築会社や不動産会社が決めているだけなのです。

 

ただ形状や空間的な捉えかたの違いにより、一般的には以下のように区別されています。

 

【ベランダとバルコニーの一般的な区別】

●屋根のあるスペースはベランダ、屋根がなければバルコニー
●2階以上ならベランダ、1階はバルコニー

 

つまり一般的なマンションやアパートの場合、2階以上で屋根によって雨をしのげるならベランダ。

1階で屋根がなければバルコニーですが、1階でも屋根があればベランダと区別するのです。

しかし、ややこしいことに英語圏になると意味が正反対になります。

 

【英語圏でのベランダとバルコニー】

●ベランダ : 地上階にあって、屋根がついていたりするスペース
●バルコニー : 屋根の有無に関係なく、2階以上にある住戸からせり出したスペース

 

英語圏において「ベランダ」という言葉は頻繁に使用されません。意味が通じないことはありませんが、住戸から続く外のスペースは大概「バルコニー」と呼びます。

仮に英語圏で1階部分の外に続くスペースをバルコニーと区別するなら、「テラス」「ポーチ」「パティオ」といった言葉を使うのが正解です。

 

実は少し狭い!?「専有面積」のルール

そして最後に解説するのが、「専有面積ってどの範囲?」という疑問。

解説を分かりやすくするため、ごくシンプルなワンルームの間取りを例にご説明します。

ワンルーム

 

言うまでもなく「洋室5帖」は、あくまでフローリング部分のみ。バストイレと収納、玄関、ベランダ以外の部分を指します。

では間取り図の隣にある「専有面積18㎡」とは、一体どの範囲を指すのでしょうか。

ずばり専有面積とは、下の間取り図における赤い部分が専有面積に該当します。バルコニーは共用スペースとなるため、住居としての面積には含まれません。

専有面積

 

また図をよく見ていただくと、赤い部分が壁と重なっているのがお分かりいただけるでしょうか。

実は不動産広告における専有面積は、「壁芯面積」で表示しなければいけないと決められています。

「壁芯」とは、壁の厚みの中心部分です。

壁芯

 

私たちが住んでいる家の壁は、間柱(まばしら)や断熱材、下地となる石膏ボード、そして壁紙など、さまざまな建材が幾重にもなっています。

つまり隣の部屋と自分の部屋の壁の内側で中心となる部分が壁芯なのです。

 

分かりにくい面積の区別

さて、壁の中心で面積を測るのを壁芯と呼ぶのに対し、実際の居住面積だけ測ることを「内法(うちのり)」と言います。

つまり壁の内部を含まない、実際に住居として使用できる部分が内法であり、登記簿に表記されるのは内法面積です。

壁芯と内法

 

「登記簿に表記されるのは内法面積」とお伝えしましたが、実は非常にややこしいことに、不動産に関する書類によって壁芯面積と内法面積で表記が違うケースがあります。

●分譲マンションの間取り図:壁芯面積

●建築確認など:壁芯面積

●登記簿や賃貸物件の間取り図など:内法面積

 

一般的に賃貸物件においては内法面積で表記されることが多いと言われていますが、実際に内法面積で表記している物件の割合などは不明です。ただアパートなどの賃貸物件は間取り図が建築当時のままであるケースもあり、壁芯面積で表記している物件も多いだろうと推測できます。

なお、壁芯面積と内法面積との差は5%くらいというのが一般的な目安。

18㎡のワンルームなら17㎡くらいが実際に使用できるスペースということになりますが、私たちの住居は間取り図の面積より少しだけ狭いというのをマメ知識として知っておくと良いでしょう。

 

意外と厳しい間取り図のルール

今回は質問されることが多い、間取り図の疑問について解説させていただきました。

不動産の間取り図は、たいてい何らかの根拠をもとに作成されています。

ウソの記載が発覚したら厳しい行政処分を下されるため、法律や広告表示に関する規則に沿って慎重に作成されているのです。

たとえば「駅まで10分って書いてあるけど、本当は15分くらいかかるんでしょ?」なんて声も耳にしますが、多少の誤差はあっても5分も違うということはありません。

不動産広告のルール上で「1分80m」という基準が決められており、ルールに沿って算出しているのです。

もしあなたが物件探しの間取り図を見て疑問に思うことがあれば、ぜひ不動産会社の担当者に聞いてみてください。

「初めて知った!」なんて意外な事実が分かるかもしれませんよ!