2019.09.15

住宅セーフティネットとは?制度活用で最大200万円の補助が受けられる!

不動産に興味をお持ちの方であれば、住宅セーフティネットという言葉を一度は目にしたことがある方も多いと思います。
住宅の確保が困難な方や空室対策を考える大家さんには、住宅セーフティネットは活用を検討したいありがたい制度です。
ただ、ところどころ制度の曖昧さや手続きのわずらわしさがあるのも事実です。

今回は、そんな住宅セーフティネットの仕組みを詳しく解説します。
住宅セーフティネットで受け取れる補助金の詳細や、補助金を受け取るまでの流れも解説しますので、ぜひ参考になさってください。

 

空室対策に有効!?住宅セーフティネットとは?

住宅セーフティネットとは、増加している空き家を活用することで、子育て世帯や低収入の人、高齢者、障害者などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅を提供する制度です。
セーフティネット制度自体は昭和の時代から存在しましたが、2017年に新制度として新たにスタートすることになりました。
また住宅セーフティネットは、主に3つの制度が一つになった制度でもあります。

 

【1】住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度

アパートなどの賃貸住宅の所有者が、所有する物件を住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として登録し、インターネット等を通じて広告する制度です。
その住宅のある自治体が物件情報を広く情報提供することで、住宅確保要配慮者への住宅提供を推進します。

 

【2】登録住宅の改修や入居者への経済的な支援

住宅セーフティネット制度には、登録された賃貸住宅の改修費用の支援や、入居希望者の費用支援もおこなっています。
いくら制度が作られても、高齢者や障碍者にはバリアフリー化が必要ですし、住宅確保要配慮者にとって家賃が高くては入居できません。
それを解決するため、国と自治体が住宅のリフォームや家賃を下げるための補助金を出してくれます。

 

【3】住宅確保要配慮者に対する入居支援

住宅確保要配慮者によっては、自身で身の回りの整理ができない人や、見守りが必要な高齢者もいます。
また家賃補助があるといっても、急な体調不良で長く働けなくなるということもあり得ます。

そういった課題やリスクを低減するため、新しくなった住宅セーフティネット制度では、自治体が居住支援や生活支援を行うNPO法人を指定できるようにしました。
また、新制度では家賃保証をおこなう業者を自治体が指定することができますが、万が一、家賃滞納などが起きた場合に家賃保証の会社の負担を軽減できるよう、住宅金融支援機構がバックアップする仕組みも作られました。

住宅セーフティネットを活用するメリット・デメリット

前述のとおり住宅セーフティネットは、「住宅の供給」「入居の促進」「万一に備える」という3つの柱で成り立つ制度です。
入居希望者、大家さん、福祉を支援する国と自治体という3社にとってメリットのある制度と言えるでしょう。ただ実は、住宅セーフティネットはメリットだけではありません。
人によってはデメリットに感じる点もあるため、入居者と大家さんのそれぞれの視点から見た、住宅セーフティネットを活用するメリット・デメリットを確認してみましょう。

【住宅セーフティネットのメリット(入居者)】

・安い家賃で入居できる
・入居審査に通らない人でも入居しやすい
・国が定める最低限の住宅性能や居住面積などが確保される
・入居のことだけでなく生活相談や見守りなどについて相談できる
・連帯保証人がいなくても家賃保証を利用できる

【住宅セーフティネットのデメリット(入居者)】

・新築や高機能の設備といったグレードの高い住宅は望めない
・物件数が少ないためエリアを自由に選ぶことができない

【住宅セーフティネットのメリット(大家さん)】

・リフォームやリノベーション費用の補助が受けられる
・家賃を下げても補助金が受けられる
・空室対策の一環として利用できる

【住宅セーフティネットのデメリット(大家さん)】

・住宅登録までの手続きが煩雑
・滞納や物件内での事故リスクがある
・補助を受けてリフォームした場合、一定期間は住宅確保要配慮者以外を募集できない
・自治体の裁量によりルールが違う

自治体によっては、住宅セーフティネットに住宅を登録するにあたって手数料を徴収しているところもあります。
ルールの曖昧さや補助金の要件、手続きが面倒といった要素が重なったことで、実際のところ登録住宅数の増加が抑制されています。

また、制度自体の認知が広まっていないため、住宅セーフティネットを利用した入居者や住宅を登録するオーナーも少ないのが現状です。
制度の目的自体は歓迎されるべきものですが、まだまだ課題が多いと言えそうです。

制度活用で1戸200万円の補助!住宅セーフティネットの仕組み

では実際のところ、住宅セーフティネットは不動産オーナーにとって有益なものとなるのか考えてみたいと思います。
結論を出すにあたって、一つ興味深い実例がありますのでご紹介します。福島県にお住いのかたが、以下のようなアパートを購入しました。

物件所在:福島県福島市
物件種別:木造アパート
戸数:8戸
物件価格:860万円
リノベーション費用:2100万円

この物件に対し、住宅セーフティネットの改修費補助の制度を利用した結果、以下のような良い効果を得ることができました。

補助金:600万円
利回り:16.2%から20.3%に増加(実質利回り約18%)

補助金を受けられたため、物件の購入と改修費用の総額が2360万円へダウンし、さらに満室経営中とのことです。
利回りが18%あるため、順調にアパート経営ができれば5年で投資資金を回収できます。

 

■参考情報:眠った空き家で利回り20%超を狙う補助金活用術

https://www.rakumachi.jp/news/column/206062

 

住宅セーフティネットにはデメリットがあることを忘れてはいけませんが、上記のようなメリットがあるのも事実です。
では具体的に、住宅セーフティネットでどのような補助があるのか見てみましょう。

【登録住宅を改修する費用の補助】

以下の改修工事を行った場合に、国、もしくは国と自治体により改修費用の補助金が支給される。

≪対象になる工事等≫

・耐震工事
・間取り変更
・シェアハウスへの変更工事
・バリアフリー化
・居住のために必要と認められた工事
・居住支援協議会などが必要と認める工事
・上記を行うためのインスペクション費用

 

≪補助金の種類と金額≫
国が補助金を支給する場合:1戸あたり50万円。工事費用の1/3まで
国と自治体が補助金を支給する場合:1戸あたり100万円。工事費用の2/3まで

※耐震工事、間取り変更、シェアハウスへの変更工事をおこなった場合、各補助金が2倍の200万円になる
※国による補助と国と自治体による補助のどちらになるかは、自治体の裁量による。

 

【家賃の値下げに対する補助】

月収15.8万円以下の入居希望者のために家賃をさげた場合、以下の補助金が支給される。
補助金の限度額:1戸4万円まで
補助を受けられる期限:最大10年間(補助総額480万円を超えない範囲で20年まで延長可)

【初回の家賃保証料に対する補助】

月収15.8万円以下の入居希望者が家賃保証を利用する際、初回に必要な保証料を最大6万円まで支給される。
「リフォームやリノベーション費用の補助」「家賃減額に対する補助」「家賃保証料の補助」という3種類の補助により、大家さんと入居者の両方にメリットがあります
ただし、空室時の家賃まで保証してくれるわけではありません。不動産オーナーとして空室対策を怠ることはできないことは肝に銘じておきましょう。

住宅登録から補助金を受け取るまでの流れ

では最後に、住宅セーフティネットを活用するまでの流れを解説します。
入居者が利用する流れは、おおむね一般の賃貸住宅を契約するまでと変わりませんので、ここでは大家さんが住宅セーフティネットを利用して、補助金を受け取るまでの流れをご紹介します。

≪住宅セーフティネットへの物件登録の流れ≫
 1.物件の所在地にある役所等の関係窓口に申請方法や提出書類を確認

≪地域ごとの担当窓口一覧≫
https://www.safetynet-jutaku.jp/guest/desk_list.php

  1. 住宅セーフティネット情報提供システムのアカウント登録

≪事業者アカウント登録ページ≫

https://www.safetynet-jutaku.jp/agent/account_entry.php

  1. 住宅セーフティネット情報提供システムにログインして物件登録と申請をおこなう

≪住宅セーフティネット情報提供システムのログイン画面≫

https://www.safetynet-jutaku.jp/agent/login.php

  1. 登録した物件情報が公開される

≪公開される住宅セーフティネット情報提供システム≫

https://www.safetynet-jutaku.jp/guest/index.php

≪改修費用の補助金を受け取るまでの流れ≫

  1. 住宅セーフティネット情報提供システムへの物件登録
  2. 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業へ交付申請を行う
  3. 交付にあたっての審査
  4. 交付決定後に工事をおこなう
  5. 工事完了後の住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業への報告
  6. 補助金を支給するための審査
  7. 登録した口座へ補助金の振込

※インスペクションが必要な場合は、物件登録前の申請等が必要になるため、詳しい流れは住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業への問い合わせをおすすめします。

≪家賃減額の補助金を受け取るまでの流れ(横浜市の場合)≫

補助金の申請方法や受け取り方は自治体によって違いますので、ここでは横浜市の例をご紹介します。

  1. 住宅セーフティネットによるによる入居開始
  2. 市へ「入居届」と「賃貸契約書」を提出する
  3. 四半期ごとに「家賃減額補助金実績報告書」と「家賃減額補助金実績明細書」の提出を行う
  4. 上記書類を提出した2か月後に登録口座へ受給する補助金が振り込まれる

物件登録まではさほど難しくありませんが、補助金の受け取りは自治体により手続きが異なる可能性が高いため、物件登録の前から担当窓口へ相談されることをおすすめします。

手続きが煩わしくとも、しっかり要件を満たせば入居者と大家さんの両方にメリットのある制度ですので、制度内容を理解してぜひ活用してみましょう!