2017.04.21

売却時の査定額は各社で違う?

不動産の売却の際、複数の不動産業者に査定依頼をすると、その依頼先によって査定額が異なることがあります。今回は、査定額が異なる理由にクローズアップしたいと思います。

  • 査定基準の知識
  • 不動産業者の考え方
  • ありがちな売主の勘違い

 

  • 査定基準の知識

本題に入る前に、査定についての必要知識について簡単に説明しておきましょう。
土地の査定材料には、地価公示価格・路線価・実勢価格等、色々な要素があります。不動産業者の査定は、このような要素を総合的に考慮して行われます。

・地価公示価格は、土地の一般的な取引価格の指標となるものですが、基準地点以外の土地価格が不明確な為、ピンポイントでの評価には不向きです。この為、その地域での相場目安を知るための指標といったイメージです。

・路線価は、公的な土地評価額の基準となる価格です。
課税額が高額になりすぎないように、実際の価値よりも安めに評価されるのが特徴で、最低価格の目安をつける指標としても有効です。

・実勢価格は、実際に取引をされている土地価格のことです。
最も査定額に近い価格です。実際の需要と供給に沿った価格なので、景気等の影響を受けやすい傾向があります。
このような異なる基準価格を参考にしながら、対象物件の地形・駅距離・日当たり・環境等の個別の要素を考慮して査定額を決定します。

 

2.不動産業者の考え方

実は、不動産業者によって査定額が異なる最大の理由は、顧客に対する「考え方」です。
次の3つの事例を参考に、どのような考え方があるのか見ていきましょう。

売却する物件の適正価格(実際に売れる価格)が3,000万円の場合と仮定し、査定業者(A~C)の気持ちを想定してみますので、貴方ならどの業者を選ぶかを考えてみてください。

=業者A=(査定提示額:3,080万円

「いたずらに高い価格をつけても売れにくくなってしまう。正直に適正価格を伝えよう」
(値引き対策として、相場より80万高い査定で提案)

=業者B=(査定提示額:3,180万円

「相場より少し高そうに見えるが、これくらいで売れるはず。しばらくして反響がなければ価格を下げることを提案しよう」
(相場より180万円高い査定で提案)

=業者C=(査定提示額:3,380万円

「高い価格で提示しておけば、とりあえず仕事がもらえるはず。売れなければ後で値段を下げさせればいいや」
(相場より380万円高い査定で提案)

 

正直に、本当に売れる値段を伝えるA、相場観が若干高いB、仕事の獲得を優先するCといったところでしょうか。このように、それぞれの経営方針による思惑や、査定感覚の違い等が査定価格に影響することがあります。
適正価格でしか売れない市場状況だった場合、Aに依頼していれば比較的早い段階で完売することになります。
Aの場合、査定時の喜びは一番少ないものの、正しい査定だったからです。
Bに依頼した場合、結局は適正価格まで値下げをしていくことになるわけですから、その分だけ販売期間が長くなります。しかし、100万円以上の値引きを想定して販売するのであれば、大幅な値引きを受けることで早期に契約がまとまる可能性もあります。
Cの場合、確実に時間だけが過ぎていき、やっと3,000万円まで下げたところで完売ということになります。
あまり売れない期間が長いと、「何か問題のある物件なのでは」と思われ、余計に売れなくなる可能性も考えられ、最も選ぶべきではない業者であることが見えてきます。

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3.ありがちな売主の勘違い

前項の業者AからCまでの提案内容は、査定額だけで判断すれば業者C(3,380万円)を選ぶという結論に達するでしょう。相場を大幅に上回る査定額で成約することが無いとは言えませんが、それは極めて稀なことです。物件の本当の価値(実際に売れる価格)は同じなのですから、見極めるべきなのは査定額よりもその不動産業者の姿勢や考え方です。「高く売りたい」という気持ちから、単に査定額の高い業者を選ぼうとすると、無駄に販売期間が長引く可能性があります。査定額とは、「これくらいで売れると思いますよ」という価格のことですから、必ずその金額で売れるわけではありません。
つまり、仲介業者に売却委託する際の査定額は買取り額ではないということです。
売主は、この点を勘違いしてはいけません。

まとめ

売主が、査定額が高い業者に依頼したいと願うのは当然のことです。
しかし、実情を理解すれば、自分に合った選択肢がより確かに見えてくると思います。
結論としては、不動産会社の適正価格の見極め能力と販売姿勢で決めるのが重要だということになります。
今回の記事を参考に、より良い売却プランを選択していただければ幸いです。