「サブスクリプション住宅」とは?家は「住む」から「利用する」へ
物は「所有する」から「利用する」へ、家は「住む」から「利用する」へ。最近、そんな言葉を見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
これは、必要な時に必要なだけ利用する「サブスクリプション」における考え方です。
できるだけ高価な物を多く持つことがステータスだった私たちの生活は、今や物を持たないスマートなライフスタイルのほうが美徳とされてきています。ただサブスクリプションをあまりよく知らない方には、いまいちピンとこないかもしれません。
私たちの生活で存在感を増してきたサブスクリプションとは何か。今回はサブスクリプションを初めて聞いた人にも分かりやすく解説させていただきます。
賃貸の新しい形!サブスクリプション住宅とは?
サブスクリプションを簡単に表すなら「月額制サービス」です。元々は月額で使えるパソコンのソフトなどに使われていた言葉でした。ただ昨今は、動画や音楽の配信サービスや新聞の電子版サービスなど様々な分野でサブスクリプションという言葉が使われるようになっています。
変わったところだと、会員制の定額洋服レンタルや定額制のラーメン屋さんなんてサービスまであります。
「衣」「食」「楽」にサブスクリプションがあるなら「住」にもあってもいいはず。
実は「サブスクリプション住宅」というサービスも既に登場しています。サブスクリプション住宅を言い換えれば「定額制の住まい」。普通の賃貸物件と変わらないように思いますが、ちょっと違います。
賃貸物件だと一つの物件を借りる契約をして、契約期間中はそこに住まないといけません。
対するサブスクリプション住宅は、賃貸契約ではなく「利用契約」。そのため一定額を毎月支払っていれば、いつでもどこにでも住むことができます。
つまりサブスクリプション住宅を提供する会社が管理する物件なら、いつでも引っ越し可能なのです。
サブスクリプション住宅は「定額制住み放題サービス」
一定の場所に住むから「住まい」。その定義は徐々に変わりつつあります。
一時「ミニマリスト」と呼ばれる「物を持たない人達」が話題になりましたが、これは住まいの形態がサブスクリプションに変わる一端と言えるかもしれません。
サブスクリプションにおける最大のメリットは「いつでも解約できる」という点。
例えば「音楽を聴く」という行動をサブスクリプションと従来で比較してみましょう。
【今までの音楽の聴き方】
- レコード店でCDを買う
- 高額なCDプレイヤーで再生する
- 聞かなくなったCDは買い取ってもらう
- CDプレイヤーは壊れたら買い替えか、二束三文で買い取り
【サブスクリプションで音楽を聴く場合】
- 定額制サービスに加入
- 好きな時に音楽を聴く(必要な機材はスマホ一つで十分)
- 節約したければ解約すればよい
上記を「住まい」に置き換えてみましょう。
自分の住む場所は、賃貸契約か購入で手に入れるのが常識でした。賃貸なら敷金や仲介手数料、購入なら税金を含めた高額な費用が必要です。
サブスクリプション住宅なら、定額料金を払っていればいつでも好きな時に好きな土地に移住可能。家を買うなりして安住したい場所が見つかった時は、サブスクリプションの解約をすれば済みます。
トランク一つでいつでも好きな場所に住まいを移せるサブスクリプション住宅は、その仕組みから「定額住み放題サービス」とも言われています。
拡大を続けるサブスクリプションサービスの市場規模
それにしても、あまりにも斬新なサブスクリプション住宅。「サブスクリプション住宅なんて流行らない」と思われる方もいらっしゃることでしょう。
確かに、サブスクリプション住宅が今すぐ大ブームになるなんて考えづらいところ。何故なら世界中ほとんどの人が一定の場所に住居を持ち、会社と家を往復するのが普通だからです。
しかし面白いデータが一つあります。株式会社矢野経済研究所が調査したところによると、2018年のサブスクリプション市場は5,627億3,600万円。しかし5年後の2023年までに、なんと市場規模は8,623億5,000万円まで拡大するとしているのです。
■画像引用:株式会社矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2114
グラフを見る限り、2021年まで概ね10%ずつ市場が拡大していきます。その後もサブスクリプション市場は5%ずつ成長。仮にこのまま5%ずつ市場が拡大するなら、2027年には1兆円市場になる計算です。
「〇億円」「〇兆円」と言われてもピンとこないかと思いますので、身近なサービスの市場規模と比較してみましょう。
ホームクリーニング市場:3,473億円 (2017年)
カラオケボックス市場:3,901億円 (2017年)
サブスクリプション市場:5,627億3,600万円(2018年)
カップラーメン市場:5,866億円(2017年)
市販薬市場:6,566億円(2016年)
数字だけで全てを表せるわけではありませんが、言ってしまえばサブスクリプションサービスはクリーニング屋さんやカラオケ屋さんより身近になったということ。
私たちの生活は確実に変化してきているのが分かりますね。
サブスクリプション住宅を提供する代表的なサイト
では実際にサブスクリプション型の住居を提供するサービスを見てみましょう。利用の予定もない空き家をお持ちの方は、サブスクリプション住宅としての活用を検討してみてはいかがでしょうか。
【ADDress】
■画像引用:
ADDress
https://address.love/
サブスクリプション住宅サービスの代表格「ADDress」。月5万円と年会費4万円の支払いで、北は北海道、南は九州までのADDressの拠点に移住可能です。もちろん敷金を含めた初期費用は必要なく、水道光熱費やネット利用料も込みです。
キッチンやバス・トイレは共有ですが、プライベートを守りながら地元の人や同じ拠点に住む人と交流できるのが魅力です。
【OYO LIFE】
■画像引用:https://www.oyolife.co.jp/
これまでの賃貸住宅に近い形態で利用できるのが「OYO LIFE」。入居期間は最短31日で、2年の契約も可能です。普通の賃貸と違うのは、敷金・礼金が不要で家具家電付きという点。またOYO LIFEは、築浅で駅から近い物件が多いため賃料は一般の賃貸住宅より高め。
それでも初期費用が抑えられることから、1年半くらいまでならOYO LIFEのほうがお得です。
必要な費用は賃料と通信費、そして水道光熱費と清掃費用の4つ。つまり実質的に私たちが普段支払っているのと同じ費用を払うだけで、どこにでも引っ越しが可能なのです。賃貸契約のような堅苦しい手続きは必要なく、申し込みから契約まで全てネット上で行われます。
全国の空き家が自分の家!?サブスクリプション住宅の可能性
もう一つ、最近よく聞くキーワードの「空き家」。
不動産業界の不安を煽るかのように、各メディアは空き家の増加をセンセーショナルに伝えています。ただ事実として、確かに日本は空き家が50年以上一貫して増え続けているのです。
空き家が増加してしまうのには、主に2つの要因があります。
・日本は新築が好まれるため中古住宅を買う人が少ない
・税金を払いたくないため相続が放棄される住宅が増加した
「所有者不明土地」なんて言葉もニュースになっていたことがありましたが、新築住宅も使われない住宅も同時進行で増え続けているのが現状です。
そんな不動産市場も「リノベ―ション」の普及により、中古住宅市場が以前と比べて注目され始めています。今回ご紹介したサブスクリプション住宅が今後も拡大していくのなら、増え続ける空き家の活路が見出せる可能性もあるでしょう。
「安く買って長く使う(貸し出す)」
サブスクリプション住宅などの新たなサービスで中古住宅を活用するのは、不動産投資などの視点で見ても合理的な手段と言えるのではないでしょうか。