2018.05.07

子供嫌いがお隣さんだったら!!

 

今回ご紹介するのは、中古物件にまつわるトラブルです。

少し珍しいケースからもしれませんが、誰にでも起き得る話だとも思えるお話です。

是非、自分に起きたつもりで読んでみてくださいね。

 

売主と隣人の関係

Aさんは、不動産業者を通して中古物件の購入をしました。
Aさんは知りませんでしたが、この物件の隣には子供が嫌いな人がいました。この物件の売主が入居した時に、「子供がうるさい!黙らせろ」等と苦情があったそうです。
その後も、隣人の行動はエスカレートしていき、洗濯物に水をかけられることもありました。泥を投げられ、自治会長や警察にも相談したことがあったそうです。
この為、売主は隣人宅との間等に目隠しを取り付け、子供達の部屋を隣人宅とは反対側に移していました。

 

Aさんの知らなかった事

Aさんは、売主と隣人とのイザコザについて、「以前騒音などによる苦情があった事があった」という程度の説明しか受けていませんでした。
Aさんは、売主にも直接聞いていましたが、売主は、「最近は問題ありません」と説明していました。
また、Aさんではない顧客がこの物件を内覧しに来た際、隣人から「うるさい!」等と苦情があったのですが、その事実も知らされないままでした。
Aさんが内覧した時には、一切そのような苦情が無かった為、全く心配していなかったのです。
購入後、Aさんが物件を訪れると、隣人から「うるさい!」と言われ、驚きました。その際、隣人から「お前も追い出してやるから覚悟しろ」というような事を言われ、初めて状況を把握しました。

 Aさんがとった行動

Aさんは、結局この物件に一度も入居することないまま、居住を諦めました。
とてもあの隣人と顔を合わせて暮らせる気がしなかったのです。Aさんは、物件についての説明義務違反があったとして、売主と売主側の仲介業者を相手に訴訟を起こしました。
売主に対しては、「錯誤による取引の無効」も主張しました。錯誤によって取引が無効になれば、売主は不当利得をしたことになり、お金が返還されるからです。

 

それぞれの主張

【Aさんの主張】
売主は、隣人からの苦情の実態について、これを詳しく説明しなかった。周辺環境は、価格に大きく影響すると考えている為、売主側に付いている仲介業者からもこの事を詳しく説明すべきだったと主張しました。

 【売主の主張】

積極的に虚偽の説明をしたわけではないし、説明義務違反もしていない。

【売主側仲介業者の主張】

近隣居住者の状況は、個人のプライバシーに関わる為、宅建業法の重要事項とされていない。
仮に説明義務があっても、買主側の仲介業者に一定の報告をすることによって、説明義務は履行されている。つまり、買主側の仲介業者の説明義務である。

 

裁判所の判決は?

売主は、買主を誤信させるような説明をすることは許されないと言うべきであり、当該事項について売主は買主に対して説明義務を負う、としました。
つまり、「最近は全く問題が無いという誤信を生じさせた」という結論です。

 売主側の仲介業者に対しても、このような客観的事実を認識した場合は、説明する義務を負うという判決が出ました。
騒音による苦情がありました」という程度の説明では、隣人の特異性を認識することはできない為、説明が不十分だという結論に達したのです。
このような内容で、Aさんの損害賠償請求が認められました。

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本件から学ぶこと

隣人の素行・評判等について、仲介業者からの調査義務が明確にあるわけではありません。しかし、知り得た内容が重大なものである場合、説明義務違反になることがある、という結果が出た意味は大きいですよね。
不動産仲介業者は、購入動機に大きな影響を与える事項について、事前に告知しなければならないということです。
そして、買主側の仲介業者の説明が不十分である場合には、売主側の仲介業者が重要事項説明をする責任があると覚えておくと良いと思います。

 

まとめ

近隣の様子等が気になる場合には、不動産仲介営業にできる限りの調査をしてもらう事も大切だと思います。
本気で購入を検討する段階になったら、近隣に事前の挨拶をしてみても良いかもしれませんね。
プライバシーに関わる部分でもあるため、調査には限界はありますが、不動産営業にも積極的に協力してもらいましょう。