2018.02.15

住宅を購入する時の親からの資金援助の税金

多くの人が贈与税を最も意識するのは、住宅購入時に親から資金援助を受けるときでしょう。また、税務署も住宅購入時の親からの資金援助には目を光らせています。通常は、資金援助額は数百万円以上でしょうから、これにそのまま贈与税が課税されてはたまったものではありません。

 

1贈与税の説明と計算式

2.贈与税の節税について

3.住宅を購入する時の親からの資金援助対策実践編

 

贈与税の説明と計算式

祖父母などから贈与をうけた場合にかかるのが贈与税ですが、その贈与税を計算する際、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産の価額を合計するところから始めます。
贈与税の計算は相続税の計算に比べるとシンプルで簡単に出来るものですので、贈与税の計算をした場合に参考にしてください。

<贈与税を計算する手順>

では早速、贈与税を計算する手順をご紹介していきます。

①基礎控除を差し引く

まず、1月1日〜12月31日までに贈与で受けた額から、基礎控除額110万円を差し引きます。

贈与を受けた財産 — 基礎控除110万円 = 課税価格

 この110万円の非課税枠は毎年利用することができますので、多くの財産を少額ずつ渡していくことで、全く税金がかからず贈与することも可能です。

②贈与税の速算表から税率を計算

平成27年以降の贈与税の税率は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2種類に分けられましたので、それぞれの当てはまる方の税率を求めて、課税価格に当てはめることで、贈与税がいくらかかるのかが算出できます。

○一般贈与財産(一般税率)の場合
例えば兄弟間の贈与や夫婦間の贈与、親から未成年の子への贈与の場合などに使用します。

基礎控除後の課税価格

200万円
以下

300万円
以下

400万円
以下

600万円
以下

1,000万円
以下

1,500万円
以下

3,000万円
以下

3,000万円

税 率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

25万円

65万円

125万円

175万円

250万円

400万円

 

○特例贈与財産(特例税率)の場合
祖父母や父母などの直系尊属から、「その年の1月1日において20歳以上の者」への贈与税の計算に使用します。「その年の1月1日において20歳以上の者」とは、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上になる直系卑属のことをいいます。

 

基礎控除後の課税価格

200万円
以下

400万円
以下

600万円
以下

1,000万円
以下

1,500万円
以下

3,000万円
以下

4,500万円
以下

4,500万円

税 率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

 

③具体的な計算例

「一般贈与財産用」の計算
 以下のような贈与の場合にこの計算方法を適応します。

・ 直系尊属以外の親族(夫、夫の父や兄弟など)や他人から贈与を受けた場合

・ 直系尊属から贈与を受けたが、受贈者の年齢が財産の贈与を受けた年の1月1日現在において20歳未満の者の場合(20歳未満の子や孫の場合)

・贈与財産1000万円の場合

課税価格:1000万円-110万円890万円

贈与税額の計算  890万円 × 40% - 125万円 = 231万円

「特例贈与財産」の計算

・贈与財産の価額が1000万円の場合

基礎控除後の課税価格 1000万円-110万円 = 890万円

贈与税額の計算:890万円 × 30% - 90万円 = 177万円

「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の両方で計算するケース

例えば、20歳以上の方が配偶者と自分の両親の両方から贈与を受けた場合が該当します。

1:全ての財産を「一般税率」で計算した後に「一般贈与財産」の割合で計算。

2:全ての財産を「特例税率」で計算した後に「特例贈与財産」の割合で計算。

3:納付すべき贈与税額=1と2の合計

 

(例)一般贈与財産が200万円、特例贈与財産が500万円の場合
1・・・この場合はまず、合計価額700万円をもと一般税率で計算します。

700万円-110万円=590万円
590万円 × 30% - 65万円 = 112万円
上記の税額のうち、一般贈与財産に対応する税額(一般税率)の計算)

112万円×200万円/(200万円+500万円)=32万円・・・A
2・・・次に「特例贈与財産」の部分の税額計算を行う
この場合も、まず、合計価額700万円を基に次のように計算します。
700万円 - 110万円 = 590万円
590万円 × 20% - 30万円 = 88万円
上記の税額のうち、特例税率にあてはめた計算
88万円×500万円/(200万円+500万円)= 62.8万円・・・B

贈与税額の計算

贈与税額 = 一般贈与財産の税額 + 特例贈与財産の税額
上記の場合 32万円 + 62.8万円 = 94.8万円・・・贈与税額(A+B)

いかがでしたでしょうか。
贈与税の計算方法についてご紹介してきましたが、非常にシンプルで判りやすいのではないでしょうか。今後贈与税の計算をするタイミングがあった場合に参考にして頂ければ幸いです。

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贈与税の節税について

相続税が2015年から増税されたことへの対策として、贈与税に注目が集まっています。ここでは、贈与税のさまざまな節税対策方法について解説します。
まず贈与税の節税対策となると、まず分割して毎年贈与するという方法があります。それは、1年につき110万円まで標準控除となり、贈与税がかからないためです。
しかし、110万円を10年間毎年贈与したら、税金を払うことなく1,100万円を贈与できる、というように安易に考えるのは禁物です。なぜなら、このような贈与の仕方をすると、一括贈与とみなされ贈与税がかかる場合があるからです。これは、110万円を10回と考えるのではなく、贈与するはずの1,100万円を分割して支払っているだけなので、1年目に1,100万円を一括で支払ったと仮定した際の贈与税がかかります。
この対策として、120万円、110万1,000円など、少しだけ贈与税がかかる金額を贈与し、贈与税を申告、納付するという方法があります。また、契約書を1年毎に作り、毎年異なる額を贈与するのも効果的です。

又、不動産贈与は、現金を贈与するより節税対策になるといわれています。それは、現金の場合は贈与した現金そのままの額に対して贈与税がかかるのに対して、不動産の場合は実際の価格ではなく評価額で決まるため、実際の7~8割程度の額にしか贈与税がかからないからです。そのため、現金ではなく不動産で贈与することにより、大幅に節税できます。しかし、不動産を購入した直後に贈与するといった明らかに節税対策とわかるような場合は、不動産を購入した価格全額に対して贈与税がかかる場合があるので注意が必要です。

また、不動産を受け取った場合には、登記代や不動産取得税といった費用がかかる点にも気をつけましょう。そして、贈与税は現金一括払いが原則となっています。そのため、不動産を受贈した際に現金で贈与税が払える蓄えが必要です。贈与者は受贈者と相談し、現金と不動産どちらで贈与するのが好ましいのか選択しましょう。

不動産の贈与には上記のような注意点もありますが、貸家、貸駐車場などの収益物件の場合、早めに贈与することで、今後見込まれる収益にかかる贈与税、相続税の節税対策になるというメリットもあります。

 

住宅を購入する時の親からの資金援助対策実践編

〇実際に住宅購入の時の流れを説明します。

①資金援助を借入金とする→「返すつもり」ではだめですよ!
親子間の金銭の貸し借りでも、他人間と同じような条件にして実際にその条件を守っていれば、贈与として扱われることはありません。

○まず金銭消費貸借契約書を作成します。
契約書のサンプルはネットや書物から簡単に入手できます。なお、収入印紙を貼ることを忘れないでください。

○その一定の利息を授受する。
無利息の場合には、市場の利率で計算した利息相当額が贈与と扱われます。

②契約条件に従って返済する。
これが一番大事です。また、返済記録が残るように返済は銀行振込みで行ってください。

③完済可能であること
借入額があまりにも多いとか、返済完了までの期間があまりにも長い場合には贈与とされるおそれがあります。

④贈与とする(贈与税が課税されない方法があるのです)→税務署への申告を忘れないでください!

又、住宅取得時の親からの資金援助に関しては、基礎控除である110万円以上の贈与を受けても、次のとおり贈与税が課税されずに済む方法があります。

〇直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税を活用する

直系尊属(父母・祖父母など)から資金援助を受けた場合には1000万円までについては贈与税が非課税になります。ただし、購入した住宅への入居の時期、床面積などの多岐にわたる条件を満たしていなければなりません。また、非課税であっても(贈与税はゼロであっても)贈与税の申告書に非課税の扱いを受ける旨を記載して税務署に提出しなければなりません。

〇相続時精算課税を選択する(親からの贈与に限定される)

相続時精算課税を選択すると贈与税の課税価格から2500万円の控除を受けることができます(2500万円までの贈与には贈与税が課税されない)。ただし、相続時精算課税を選択した分は親が死亡したときに相続財産に含めて相続税額を計算しなければなりません。相続時精算課税と住宅取得資金の贈与税の非課税制度は併用が可能ですので、1000万円+2500万円=3500万円までは贈与税が課税されずに済むのです(父母両方で相続時精算課税を適用し資金援助を受ければさらに2500万円が非課税となります)。

〇住宅を親名義にする→方法はいたって簡単です!

案外、この最もシンプルな方法を知らない人が多いです。例えば、4000万円の住宅を購入するにあたって、親から資金援助を2000万円受けた(購入総額の半額を援助してもらった)のであれば、住宅名義の半分を親にしておけばよいのです。

考えてみれば、このようにするのは当然です。住宅に限らず物の所有者は、購入の際に代金を支払った人です。それ以外の人が所有者となっているのであれば、購入代金や購入した物を贈与されたとされてしまうのは当然です。

この方法はいたって簡単です。法務局で登記をする際に、「名義は私と父(母)の半々の共有名義でお願いします」と告げるだけでいいです。しかし、多くの人は「自分の住む家は自分の名義」と考えてしまう、あるいは、こだわってしまいます。
これらの方法は知っているか知らないかで大変な違いです。
贈与税に関しては、「何が贈与税の対象になるか」と「贈与税を(合法的に)回避する方法」を知っているか知らないかで大変な違いとなります。
節約できるものは節約しましょう。