2019.08.27

建築基準法の一部改正で何が変わる?

建築基準法の一部が改正されたのをご存知ですか?
注文住宅で家を建てる際や、収益物件の建築をする予定がある人には、意外に関係が深い話になるかもしれません。今回は、平成30年9月25日(火)に、施行されている改正点について内容をまとめておきたいと思います。

主な改正内容

改正点については、大きく分類して6つの項目に分けることが出来ます。一つずつ、できるだけ簡単にご紹介していきます。

1.防火構造の指定範囲を変更

これまでも、建築基準法上では、木造建築物等である特殊建築物の外壁等を防火構造しなければならない規定がありました。この木造の特殊建築物の範囲等が見直されました。その他、レオパレスの不良施行問題で話題になった「界壁」についての規定にも見直しがありました。

第三十条(一部抜粋)

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。

2.再建築不可の手続きに変化

但し書き道路の再建築時の手続きが緩和されました。建築基準法の道路ではない通路や空き地に面した土地については、原則として再建築ができません。
これまで、再建築不可の土地に建物を建てる際には、必ず建築審査会の同意が必要でした。

今回の改正では、接道規制の適用除外に係る手続が合理化され、一定の基準(建築基準法施行規則に規定)に適合する建築物について、建築審査会の同意が不要となりました。
また、地方公共団体によって、道路について必要な制限を付加できるようになりました。
土地活用の幅が広がる、緩和的な改正ですね。

条文の抜粋

第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

一 自動車のみの交通の用に供する道路

二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの

二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
3 地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第一項の規定によっては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係に関して必要な制限を付加することができる。

一 特殊建築物
二 階数が三以上である建築物
三 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物四 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合にあっては、その延べ面積の合計。次号、第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物五 その敷地が袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。)にのみ接する建築物で、延べ面積が百五十平方メートルを超えるもの(一戸建ての住宅を除く。)

3.老人ホームの建築規制を緩和

老人ホーム等(老人ホーム等の共用の廊下等)の容積率規制について、共同住宅と同様に、共用の廊下・階段の床面積を容積率の算定対象外としました。
要するに、廊下や階段部分を除いた面積で容積を算定すれば良いので、同じ土地面積で考えた場合、今までよりも少し大きな間取りが実現できるということです。

    
4.日影規制の許可手続きが緩和

日影規制を適用除外とする特例許可を受けた建築物についての変更です。
特例許可を受けた建物が、一定の位置及び規模の範囲内で増築等を行う場合には、再度特例許可を受ける必要がありました。
今回の改正によって、以下のような文言が追加され、規制が緩和されています。
特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。

5.オリンピック対策を追加

今回の改正で、仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例を規定しました。
仮設建築物のうち、オリンピックのプレ大会や準備等に必要な施設等、特に必要があるものについて、(建築審査会の同意を得て)1年を越える存続期間の設定を可能としました。

以下、追加された条文の抜粋です。

第八十五条

(途中省略)

6 特定行政庁は、国際的な規模の会議又は競技会の用に供することその他の理由により一年を超えて使用する特別の必要がある仮設興行場等について、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、公益上やむを得ないと認める場合においては、前項の規定にかかわらず、当該仮設興行場等の使用上必要と認める期間を定めてその建築を許可することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。

7 特定行政庁は、前項の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。

 

6.宅配ボックス等が設置しやすくなった

宅配ボックス設置部分等を容積率規制の対象外とする改正が行われました。
これによって、オフィス・商業施設などにも宅配ボックスを設置しやすくする動きが進んでいくものと思われます。
公布:平成30年9月12日(水) 施行:平成30年9月25日(火)  

 

まとめ


今回の改正での主なポイントは、「防火に関する規定」・「道路に関する規定」・「容積率緩和の規定」の3つです。
防火に関する規定は、建築コストに直結しますし、道路についても該当する物件は相当数存在していると思います。
建物を建築する予定がある人は、見積書に改正によるコストの増減が織り込まれているか、確認しておくと良いと思います。

参考資料

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000097.html