不動産の紛争事例で学ぼう! 高度地区に関するトラブル
今回ご紹介するのは、高度地区にまつわるトラブルです。
高度地区の意味と、重要度を理解することができる良い事例だと思いますので、今回も自分に起きた事だと思って考えてみてくださいね。
- 購入経緯
- 重要事項説明
- トラブルの発生
- それぞれの主張
- 裁判所の判決
- まとめ|この事例で学ぶこと
購入経緯
買主Xは、仲介業者Yを介して、土地付の中古物件を購入しました。
売主Zは不動産業者でしたが、Yが仲介していたので買主Xとは面識がありません。買主Xは、この土地の建物を取り壊し、住宅兼工房を目的とした建物を建築する予定でした。
この事は、仲介業者Yにも伝えてあり、建築士にも確認していました。
買主Xは、延べ床面積100㎡の建物が必要な計画を持っていて、これを叶えるには4階建にする必要がありました。
重要事項説明
契約前に行う重要事項説明は、仲介業者Yが行いました。この土地の建蔽率・容積率・第二種高度地区であることが説明されていました。
高さ5m以上の部分が斜線制限にかかる高度地区でしたが、建築士に確認していることもあり、これについての具体的な説明と資料の添付はしていませんでした。
重要事項説明を行った取引士からも「4階建は問題なく建つ」と聞いた為、買主Xは安心して契約をしました。
※斜線制限がかかると、上層階の天上高や屋根の形状等に制約が出ることになり、思うような間取りが入らなくなる可能性があります。
トラブルの発生
売主の業者Zは、事前に買主Xの希望プランを聞かされていませんでした。一方、買主Xは、建築事務所Aに設計を依頼して計画を進めていました。
しかし、買主Xが理想とする4階建のプランは実現不可能であることが判明します。こうして、買主Xは、止む無くこの土地を転売して処分することを決めたのでした。
Xは、転売に要した諸費用、設計業務にかかった費用、慰謝料、弁護士費用等の賠償金を求めて裁判を起こしました。
それぞれの主張
Xは、仲介業者Yに対して建築予定の建物の詳細を伝えていた事と、取引士に4階建が建つと説明を受けた事を主張しました。又、売主の業者Zにも、不動産会社としての説明義務があるはずだと考えたのです。売主Zは、これに対して、Xの計画を知らなかった事を説明しました。
そして、買主Xが建築士に自ら確認し、どの程度の建築ができるか理解していたはずだと主張しました。
仲介業者Yもまた、Xは建築士に確認をしていたのだから、こちらは建築の専門家に口出しできる立場に無かったと弁明しました。
そして、重要事項説明において第二種高度地区である説明はしており、4階建が建つとは言っていないと主張しました。
確かに、Xは建築士に確認した上で購入している為、判断が難しい案件だと思いませんか?あなたは、どう考えたでしょうか。
裁判所の判決(東京地裁・判決平成21.4.13)
仲介業者Yは、Xが希望する建物の詳細を把握していたのだから、単に存在する法規制の種類だけではなく、制限の具体的内容の説明を通じてXが希望する建物が建築できないことも説明すべきだったというのが、裁判所の結論でした。
また、売主の業者Zにも、不動産業者としての説明義務が免除される理由は無く、同席して説明する機会を放棄したのだから、説明義務違反となるとの結論でした。
損害賠償の額については、転売の諸費用等については認めましたが、慰謝料や弁護士費用については認めませんでした。
まとめ|この事例で学ぶこと
仲介業者は、買主が建築の専門家に相談していたとしても、その土地に対する建築可能な建物についての説明を免れることができるわけではないという事です。
また、不動産会社が売主の場合には、例え仲介業者が入っていたとしても、一緒に重要事項の説明義務を負うという事を覚えておくと良いと思います。
今回は、プロの不動産業者が、きちんとやっているつもりで起きた事例でした。不動産業者の本来の役割を痛感する事例ですね