2019.12.26

最近よく聞く「不動産テック」とは?日本の不動産テック最新事情

徐々に耳新しくもなくなってきた「不動産テック」。でも実は、不動産テックがどんなものかイメージしきれないなんて方も多いのではないでしょうか。それもそのはず。便利であるが故に、それが不動産テックだと気づかないくらい私たちの身近に存在するようなったのです。

 

そこで今回は「私たちの身近にある不動産テックとは?」をおさらいしつつ、日本の不動産テックが今後どのように進展していくのか考えてみたいと思います。

知れば知るほど、意外と身近に不動産テックがあることに気づくかもしれません。

 

不動産テックとは?定義と意味を解説

不動産テックとは「不動産」と「テクノロジー」が掛け合わされて生まれた言葉です。「〇〇テック」という言葉は、元々「フィンテック(FinTech)」が始まり。そのため不動産テックという言葉が流行し始めた頃は「不動産 × フィンテック」というイメージがありました。しかし目まぐるしいIT技術の進歩により、昨今は不動産市場の可視化や利便性の向上などに寄与するITサービス全般を不動産テックと呼んでいます。

つまり不動産テックは「不動産とテクノロジーの融合」と考えれば良いでしょう。

 

不動産テックと言っても様々な種類があり、分野別に分けると実に12種類にもなります。

 

・ローン・保証

・クラウドファンディング

・仲介業務支援

・管理業務支援

・価格可視化・査定

・不動産情報

・物件情報・メディア

・マッチング

・VR・AR

・IoT

・リフォーム・リノベーション

・スペースシェアリング

 

分かりやすいところで言うと、一時話題を集めた「VR内見」。わざわざ現地まで行かなくても、VR専用ゴーグルを装着してその場で内見できます。またAIが不動産の売却価格や不動産投資のシミュレーションをしてくれる無料サービスも続々と登場し、今や不動産テックは身近に存在するツールです。

 

不動産テックに対する国の動き

不動産業界は予てより「IT化が遅れている」と言われています。少し古いデータですが、総務省が2014年に公表したデータによると、産業別のIT技術利活用において不動産業界は10分野のうち6番目だとされています。

 

■画像引用:国土交通省 土地白書(平成28年)

http://www.mlit.go.jp/statistics/file000006.html

 

少子高齢化や人口減少、空き家と老朽化マンションの増加、働き方やライフスタイルの変化など、現在の不動産業界は明らかに昔と状況が違います。つまり不動産テックの推進は急務と言っても過言ではありません。

 

国も不動産業界におけるIT化の遅れを認識しています。そのため国土交通省は「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く「超スマート社会」を目指す「Society5.0」に対し、不動産業界としてのあり方を以下のように示しています。

 

・不動産取引の電子化

・「Society5.0社会」への対応

・不動産情報と個人情報保護の関わり方を検討

・不動産の新たな利用方法や管理に関するサービスへの規制

 

■参考:国土交通省「不動産業ビジョン 2030」

https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000190.html

 

一時話題になった「IT重説(重要事項説明の電子化)」は記憶に新しいところです。また事務作業や情報管理のクラウド化による業務効率は、今や不動産業界でも珍しくありません。

 

ただ、いくら便利になってきたからといっても守らなければならない部分があります。

例えば不動産と個人情報は密接な関係にあることから、ある意味では不動産情報のオープン化と個人情報の守秘義務は二律背反のような関係。同時に活用の幅が広がってきた不動産業界において、従来の法律や規制ではそぐわない部分も少なからず出てくるでしょう。

 

国も不動産業界のIT化に全く関与していないわけではなく、「攻め」と「守り」のバランスを検討している段階なのです。

 

AIを活用した不動産テックの事例

 

では最新の不動産テック事情はどうなのでしょう。最近は様々な企業が新たなサービスを展開しているため、正直なところ「ここまできたか!」と思わせるには情報が雑然としている印象があります。

そこで具体的な不動産テックの事例として「AIを活用した不動産テック」をご紹介します。

 

【VALUE AI】

■画像引用:VALUE AI

https://value-ai.jp/

 

先ずご紹介するのは、不動産投資をする人だけでなく自身が所有する不動産の価値を確認するのにも役立つ「VALUE AI」。株式会社コスモスイニシアが提供する、投資用不動産のAI診断サービスです。

建物の種類や所在地など簡単な情報を入力するだけで、同社の持つ膨大な取引データを基にAIが不動産の価値や収益性などを自動で診断してくれます。

■画像引用:VALUE AI

https://value-ai.jp/

 

しかも全ての機能が無料で利用できるため評判も上々。VALUE AI一つあれば、エクセルで収支シミュレーションを一生懸命作る必要はなくなるでしょう。

 

【ノマドクラウド】

■画像引用:ノマドクラウド

https://nomad-cloud.jp/follow_up_client/

 

不動産屋さんの業務もテック化が進んでいます。イタンジ株式会社が提供する「ノマドクラウド」は、不動産業務における営業活動と顧客管理を一元管理できる優れもの。顧客からの問い合わせ情報を基に、AIが自動で物件を提案。顧客分析も自動で行われるため、顧客に合わせた対応が可能です。

 

■画像引用:ノマドクラウド

https://nomad-cloud.jp/follow_up_client/

 

またAIではありませんが、自動で作成される顧客専用ページの中でマンツーマンのチャットも可能です。来店が成約への近道だった不動産営業も、ノマドクラウドの活用により常識が変わるかもしれません。

 

日本の現状から不動産テックを考える

 

さて、不動産テックが身近になったとはいえ、不動産業界のIT化も道半ば。ただ新興市場とはいえ、大手企業も続々と参入してきています。特に昨今は、ベンチャーやスタートアップが開発したサービスの取り込みに躍起になる企業が目立ちます。

 

では今後の不動産業界におけるテック化はどうなっていくのでしょうか。一つの参考として株式会社矢野経済研究所が公表した「不動産テック市場規模推移」という興味深い調査データがあります。

なんと2020年までに不動産テック市場は、6,267億円にまで成長するとしているのです。

 

■画像引用:矢野経済研究所「不動産テック市場の実態と展望」

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1889

 

6,200億円という市場規模は、GDP比で0.1%。

大したことない数字に思えるかもしれませんが、実は「文具・事務用品(4,662億円)」や「家庭用ゲーム(4,343億円)」の市場より大きな産業。不動産テックは非常に身近な市場になってきたと言っても過言ではありません。

 

最近の賃貸ポータルサイトでは、360度カメラで部屋全体の様子が確認できる物件を多く見かけるようになりました。これだけでも不動産業界が大きく変化したと思わせるのに十分と言えるでしょう。

後はやはり、官民が一体となって情報の透明性をどこまで進められるかが今後の課題になってきそうです。