【ガラスとサッシ】最強の組み合わせで断熱効果が4倍に!窓の性能を比較
「ウチは安い家だから、夏は暑いし冬は寒くて……」
あなたはそんな話をしたことがある、または聞いたことがあるのではないでしょうか。
ただ家の断熱効果は、安い家か高い家かで決まるものではありません。
家の暑さ寒さは構造だけでなく、実は「窓」の性能が非常に大事。窓の素材や性能を変えるだけで、断熱効果がなんと4倍も違ってくるのです。
この記事では、あまり知られていない窓の「ガラス」と「サッシ」の断熱効果を分かりやすく解説します。
家の暑さ寒さは「窓」の対策が最重要
家のなかの温度は、木造か鉄骨かといった建物の構造が影響します。
しかし「窓」による熱の出入りが、室内の快適さに大きく関係しているのをご存じの方は多くありません。室内温度は、窓が決めていると言っても過言ではないのです。
一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会の調べによると、冬の温かさは約6割が窓から逃げ、夏の暑さは約7割が窓から入ってくるとしています。
画像引用:一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会
エアコンやストーブといった冷暖房の光熱費を安くしたいと考えても、建築済みである家の構造は変えられません。よって室内の冷暖房効率を上げるためには、「窓の質」を高めるしかないのです。
では窓の質とは何でしょうか。
カギとなるのは「窓ガラス」と「サッシ」です。
【窓ガラスの性能比較】ガラスの違いで最大2.2倍の断熱効果
あなたはこれまで、住宅の窓ガラスが二重になっているのを見たことがあるのではないでしょうか。
一般的に「ペアガラス」という呼び名で知られていますが、ペアガラスは旭硝子株式会社の登録商標です。そこでこの記事では、住宅業界全般で使われる「複層ガラス」という総称でご説明します。
一般社団法人日本サッシ協会が分かりやすくまとめている、単板ガラスと複層ガラスによる熱貫流率の違いをご覧ください。
【ガラスの仕様による熱貫流率の比較(アルミなどの金属製サッシ)】
熱貫流率(W/㎡・K) | |
単板ガラス | 6.51 |
複層ガラス | 4.07 |
参考:一般社団法人日本サッシ協会 「建具とガラスの組み合わせ」による開口部の熱貫流率表
熱貫流率とは、2つの物質の間における熱の伝わりやすさを表す数値です。
なお複層ガラスではない1枚ガラスの窓を「単板ガラス」と言いますが、上表の単板ガラスと複層ガラスでは熱の伝わりやすさに1.6倍もの違いがあります。
また複層ガラスには性能の違いがあり、ガラスとガラスの間に無害の特殊なガスを封入したり、ガラスに特殊な金属膜を貼ったりして断熱効果を高める商品も普及しています。
では、単板ガラスと断熱性能の高い複層ガラスではどれほどの違いがあるか、改めてご覧ください。
【ガラスの仕様による熱貫流率の比較(アルミなどの金属製サッシ)】
熱貫流率(W/㎡・K) | |
単板ガラス | 6.51 |
Low-E複層ガラス (中空層10mm以上、ガス封入あり) |
2.91 |
参考:一般社団法人日本サッシ協会 「建具とガラスの組み合わせ」による開口部の熱貫流率表
「Low-E複層ガラス」とは、放射性の低い金属膜を貼ったガラスです。そして「中空層」は複層ガラスの空気層の厚み。さらに上表では、中空層に安全性が高く熱を伝えづらい「ガス」を注入した複層ガラスとで比較しています。
その結果、熱貫流率はなんど2.2倍という高い断熱効果。
窓性能の違いが、室内の断熱効果に対して非常に有効であることがお分かりいただけるかと思います。
建物の構造は断熱効果を決める大事な要素ですが、建築後に構造を変えることはできません。建物の建築後に断熱効果を改善するなら、真っ先に窓性能に着目する必要があるのです。
ただし、窓の断熱効果はガラスだけで決まるわけではありません。
ガラスと同等に大事なのが「サッシ」です。
【サッシの性能比較】素材の違いで1.3倍の断熱効果
サッシとは窓の周りを形作る枠の部分。
よく見かけるのが「アルミサッシ」の窓ですが、アルミサッシは「低断熱」という大きなデメリットがあります。ただアルミサッシは耐久性があり、低コストで作れるため、日本の住宅はほとんどがアルミサッシです。
そこで近年注目されているのが「木製サッシ」。金属製か木製かの違いだけでも断熱効果は変わります。
前述にてご紹介した一般社団法人日本サッシ協会が公開している、サッシ仕様による熱貫流率の違いをご覧ください。
【サッシの違いによる熱貫流率の比較(Low-E複層ガラス)】
サッシの仕様 | ガス封入 | 中空層 | 熱貫流率(W/㎡・K) |
金属製サッシ | あり | 10㎜以上 | 2.91 |
10㎜未満 | 3.49 | ||
なし | 14㎜以上 | 2.91 | |
7㎜以上14㎜未満 | 3.49 | ||
7㎜未満 | 4.07 | ||
木製サッシ | あり | 10㎜以上 | 2.15 |
8㎜以上10㎜未満 | 2.33 | ||
8㎜未満 | 2.91 | ||
なし | 14㎜以上 | 2.15 | |
11㎜以上14㎜未満 | 2.33 | ||
11㎜未満 | 2.91 |
上表で「ガス封入あり、中空層10mm以上」の熱貫流率を比較してみましょう。
金属製サッシは熱貫流率2.91 W/㎡・Kであるのに対し、木製サッシは2.15 W/㎡・Kです。金属製サッシか木製サッシかによっておおむね1.3倍の違いがあります。
窓の性能によって熱貫流率が違うのは上表のとおり。「サッシの仕様」「ガス封入の有無」「中空層の厚み」といった窓の性能は、室内の断熱効果に何倍もの違いを生むのです。
では、もっとも断熱性能の良い窓とはどんな窓でしょうか。
サッシとガラスの組み合わせで省エネ効果は4倍の違い!
ここまで解説した情報をいったんまとめてみましょう。
●冬の暖房効果は窓から6割が逃げ、夏の暑さは窓から7割が入ってくる
●窓ガラスの種類によっては、最大で2倍以上の断熱効果がある
●窓サッシの素材だけも断熱効果に1.3倍の違いを生む
家の断熱効果は、窓の「ガラス」と「サッシ」を変えることによって大きく変わります。
では高い断熱効果を発揮する最強の窓とはどんな窓でしょうか。
一般社団法人日本サッシ協会が公表するデータを基に確認してみましょう。
画像引用:一般社団法人日本サッシ協会 「建具とガラスの組み合わせ」による開口部の熱貫流率表
画像の表でもっとも熱貫流率の高いのが、一番上にある1.60 W/㎡・Kです。一般的な単板ガラスの窓と比較し、実に4倍もの違いがあります。
実際には、雨戸の有無や和障子の有無などでさらに断熱効果は高められます。
ただ、窓だけを変えるだけでも非常に大きな断熱効果があるのがお分かりいただけるでしょう。
もっとも断熱効果の高い窓の組み合わせを分かりやすくするため、箇条書きにしてみました。
●樹脂製または木製サッシ
●三層複層ガラス
●2枚以上のガラスにLow-E加工
●ガス封入あり
●中空層13mm以上
上記はあくまで、データによる熱貫流率を基にした窓の仕様と性能です。
実際に高性能の窓に変更しようと思うと、一つの窓だけであっという間に10~20万円ほどの費用がかかります。
とはいえ、毎月の電気料金を抑えられるなら窓のリフォームも一考です。
節約できる光熱費を天秤にかけながら、高性能の窓に変えてみることを検討してみてはいかがでしょうか。